私は以下の3冊の本を購入しました。どれもTAC出版です。
・スッキリわかる建設業経理士2級
・合格するための過去問題集
・合格テキスト
このうち、一番下の「合格テキスト」はほとんど使用しませんでした。
最初に「スッキリわかる」をざっと確認し、勉強時間の大半は「過去問題集」に費やしました。
以下、主に私の利用した参考書の詳しいレビューとなっていますが、試験の出題傾向や勉強方法にも触れていますので、別をテキストをすでに購入したが勉強方法が見えてこない方などにも参考になれば嬉しいです。
まず導入本として、こちらから勉強を始めました。
正直なところ、「日商簿記のときに『スッキリわかる』で勉強した」方以外には、手放しには勧められません。
同様の日商簿記の参考書をお持ちなら、わざわざ建設業経理士のものを買う必要はないと思います(過去問題集は必要です)。
ただし、「日商簿記2級を勉強したことがない・今後受験するつもりもない」初学者の方は、仕訳暗記用に購入しておくのが良いと思います。
その場合も、この本にはあまり時間を掛けず、過去問演習に時間を注いでください。
中身ですが、建設業経理士特有の説明が出てくるのはもちろんですが、日商簿記をほぼそのまま流用している部分も多いです。
この本でのゴエモン君は、建設の安全ヘルメットをかぶっています。
400ページ強とボリュームがありますが、日商簿記2級を勉強していれば、かなり多くの部分を飛ばして進められます。
割合は、商業簿記の内容が250ページ、工業簿記が100ページ強、財務諸表が50ページ弱となっています。
初学者の方は、商業簿記部分は「仕訳の『暗記』」、工業簿記部分や「システムの『理解』」に重きを置くのが良いと思います。
また、最後の財務諸表部分は、実際に問題を解いてみることで慣れてくるので、よく分からなくても大丈夫です。
建設業経理士は、日商簿記よりも「過去に出題された問題が解ければ点数が取れる」場合が多いです。
ですので、こういった導入本は、10時間程度の勉強で終わらせ、あとは過去問演習時の辞書替わり・仕訳の単純暗記に適宜使うのが良いと思います。
私は日商簿記2級で勉強したこともあり、この本は3時間程度で終わらせました。
以降詳しく書きますが、この本に時間を掛けすぎるのは効率が悪いです。
ページ数から、「スッキリわかる日商簿記」と同様、本の後半は練習問題なのかと思っていましたが、こちらは1問も入っていません。
問題を解いてみたい場合は、別冊で「スッキリとける問題集」を購入しなければなりませんが、検定合格が目的の場合この本をわざわざ購入して勉強する必要はありません。
そして、この1冊で合格はまず無理だと思います。
この本の最も致命的な部分は、巻末の索引がしっかりと網羅できていないことです。
例えば、日商簿記では聞いたことがなかった「完成工事高」は2級の試験では必出です。
仕訳問題で、「工事進行基準を適用した数年間の工事で、当期の完成工事高および完成工事原価の計上の仕訳をしなさい」という問題は、第16回・15回・14回・13回・11回・・・と毎回のように出題されています。
そもそも、第5問の精算表に必ず載っていますし。
にも関わらず、索引で該当ページの説明を見つけることができないのです。
ちなみに、「合格テキスト」には序盤できちんと説明がなされています。
また、前述の「日商簿記のテキストを流用」していることで、試験に対応できない部分が出てきます。
具体的な例を挙げてみます。減価償却です。
175ページは、日商簿記の流用で、減価償却累計額に対する勘定科目は「減価償却費」となっています。
ですが、建設業経理士の検定では、減価償却費なんて出題されていません。
375ページでは、減価償却費ではなく「販売費及び一般管理費」となっています。こちらは試験でも頻出です。
ところが、検定での減価償却費の扱いは、次のような形で出題されています。
・備品:販売費及び一般管理費
・機械装置:未成工事支出金
このテキストには、ほぼ毎回出題されている後者の機械装置の減価償却の話が出てこないのです・・・。
困ったことに、過去12回で1回しか出題されていない難問(捨て問)なのに、参考という形で数ページに渡って解説されていたりします。
それを詳しく載せるなら、本当に大事な範囲をきちんと網羅してほしいです。
見るページによって、説明なしに勘定科目が変わっていますし、全然出題されない勘定科目をテキストに載せています。
こういったことは、特に初学者の方には混乱の元となってしまいます。
一方で、頻出の内容が全く触れられていないものも多く、あまりに残念です。
些細なことですが、著者の滝澤ななみさんはブログで簿記やFP検定に関する役立つ情報発信をされています。
ところが、このブログでは建設業経理士の検定の話は出てきません。
また、建設業経理士と同じ日にFP検定があったのですが、その試験終了日の記事で、「FP試験お疲れ様でした!」といった内容を投稿されていました。
建設業経理士の試験には、ほとんど力を入れず、片手間感覚で出版されたのかなとすら思ってしまいます。
日商簿記2級は滝澤さんの著書のおかげで合格できたため、今回も迷わず滝澤さんの本を購入しました。
ですが期待していた分、建設業経理士の参考書の出来は今一つでした。
この本は、手放しでおすすめできます。
私はこの本のおかげで合格できました。
過去12回分の本試験の問題が収録されていて、それぞれ解説も十分詳しく載っています。
9月に受験を考えている方は、この本は早めに購入しておくことをお勧めします。
どうもこの本は「増刷しない」らしく、売り切れたらその年は新品を定価で購入することは難しいです。
実際にamazonでは、売り切れた後は定価よりも高額な物を個人で買うしかありません。
私は受験前に購入していなかったのですが、どこのオンラインショップでも売り切れ。
近所の本屋を探し回り、大きい書店に1冊だけ偶然に売れ残っていました。
それなりに大きい書店でなければ、そもそも建設業経理士の参考書を置いていません。
過去問題集は、必ず早めに確保しておいてください。
この本は、「第1部 攻略テクニック編」と「第2部 過去問題編」に分かれています。
第1部がとても秀逸で、日商簿記2級の勉強をしっかりされてきた方は、ここの問題を解くだけで、過去問演習にすんなり入れると思います。
第2部の過去問の解答解説は「必要十分」といった感じですが、第1部に同様の問題の詳細な解説がなされていますので、第1部がしっかり解けるようになれば、あとは過去問演習を繰り返すだけです。
過去問演習は、大体30時間くらい行いました。
1回につき2〜3時間くらい、それを12回分プラスアルファ、といった感じです。
過去問題集として、ネットスクールの「パターンと解き方」も売れているようですので、そちらも良いかもしれません。
こちらは目を通していないのですが、「日商簿記2級合格者でなければ難しい」といったレビューも見られましたので、初学者の方はこの本だけでは難しいかもしれません。
前述の通り、私は大体40時間弱の勉強で試験に挑みました。
私は日商簿記2級を合格(72点とギリギリですが)していますので、初学者の方は倍以上の時間を覚悟しておいた方が良いと思います。
参考までに、私の簿記の勉強履歴は以下のような感じです。すべて独学で勉強してきました。
・日商簿記3級 30時間程度(全くのゼロからのスタート)
・日商簿記2級 80時間程度(簿記3級を96点で合格してから)
私が受験したきっかけは、「日商簿記2級に受かっていれば、建設業経理士2級は楽」という意見をネットで見つけたことです。
感想としては、毎回過去と似たような問題が出る分、問題自体は日商簿記より難しく感じました。
ですので、日商簿記以上に過去問題を完璧に仕上げることが、合格の近道です。
数字だけ替えて全く同じことを聞いている問題も頻繁に出題されています。
また、第5問は必ず「決算整理事項を修正仕訳し、精算表を完成させる」問題が30点配点で出題されています。
たまに、過去に出ていない問題が出題されることがあります。
私の受験した第18回の場合は、減価償却の定率法が当てはまります。
ですが、過去問がきちんと解けるようになっていれば、100点は難しくても合格点は楽に超えられるようになるはずです。
くどいようですが、とにかく「過去問が解けるかどうか」が全てです。
決して、「スッキリとける」の問題ができるようになって満足、とならないようにしてください。
導入本として、「スッキリわかる」を具体的に取り上げましたが、その他の本を利用する場合も、「あくまでメインは過去問題の演習。過去問が確実に解けるようになれば、合格点は十分に取れる」ということをお忘れなく。
検定のサイトで過去数年分の本試験問題が解答付きで見られますが、詳しい解説の載っている過去問題集を購入し、10回分は解いておくことをおすすめします。
(少なくとも私は、「合格するための過去問題集」の解説がなければ合格できませんでした)
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